黒ナンバーで荷物を運ぶ軽貨物の事業者は、2025年4月から、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を1人選ぶことが義務になりました。選ぶ前に国土交通大臣の登録を受けた機関で講習を受け、選んだあとは運輸支局へ届け出ます。1人で働く個人事業主も対象です。すでに開業している人は2027年(令和9年)3月まで、これから始める人は事業を始める前までに済ませる必要があります。この記事は2026年10月時点の国土交通省の案内にもとづいています。

貨物軽自動車安全管理者は、軽貨物の安全を管理する担当者です

貨物軽自動車安全管理者(以下、安全管理者)は、事業で使う軽バン・軽トラの運行の安全を確保する業務を管理する人です。国土交通省によると、保有台数1万台あたりの事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は、2016年から2023年にかけて約4割増えました。これを受けて2024年に法令が改正され、2025年4月から、軽貨物にも安全対策が義務として加わっています。

対象は、四輪以上の軽自動車で荷物を運ぶ貨物軽自動車運送事業者です。バイク便(二輪や三輪の車両を使う事業)は、安全管理者の選任義務の対象外です。

1人で働く個人事業主も、選任が必要です

安全管理者は営業所ごとに1人選びます。従業員がいない個人事業主も対象で、国土交通省のFAQは、基本的に自分自身を選任するよう案内しています。配偶者などの家族従業者から選ぶこともできます。営業所ごとに複数人を選ぶことも認められています。

経営届出をして自分の名前で黒ナンバーを取っている人は、1人で働いていても貨物軽自動車運送事業者として扱われます。

選任までの流れは「講習、選任、届出」の順です

  • 講習を受ける:国土交通大臣の登録を受けた講習機関で、貨物軽自動車安全管理者講習(5時間以上)を受けます。内容は法令、運行管理の業務、事故防止などで、最後に修了試問があります。修了すると修了証明書が出ます。
  • 選任する:選任できるのは、講習を選任の日前2年以内に修了した人です。講習を受けたあと、2年以内に選任します。
  • 運輸支局へ届け出る:届出書に、事業者の氏名と住所、安全管理者の氏名と生年月日、営業所の名称と所在地、兼職の有無を書き、講習の修了証明書の写しを添えます。選任したら遅滞なく届け出ます。国土交通省の通達では、遅くとも1週間以内に届け出るよう指導することとされています。

講習機関の一覧は国土交通省のページにあり、eラーニングと対面があります。受講料は機関ごとに異なり、たとえば独立行政法人 自動車事故対策機構(ナスバ)のeラーニングは、受講手数料が3,700円(税込)、受講期間は支払い日を含む30日間です(2026年10月6日確認)。届出は窓口や郵送のほか、2025年9月からオンラインでもできます。運輸支局によっては経営届出と選任届出の窓口が分かれているため、行く前に電話で確認すると確実です。

期限は、すでに開業している人と、これから始める人で違います

  • 2025年3月までに経営届出を出している人:2027年(令和9年)3月までに選任します。
  • 2025年4月以降に経営届出を出す人:届出のあと、事業を始める前までに速やかに選任します。猶予期間はありません。

選任をしない場合や、届出をしない・うその届出をした場合は、100万円以下の罰金の対象になります(貨物自動車運送事業法第75条)。猶予期間中の人も、期限までに講習の受講と選任を済ませておく必要があります。

選任したあとは、2年ごとの定期講習と、安全管理者の仕事があります

選任後は、2年ごとに貨物軽自動車安全管理者定期講習(2時間以上)を受けます。

安全管理者の仕事は、事業者に課せられた安全対策を管理することです。国土交通省のFAQでは、主に次のものが挙げられています。

  • 運転者への点呼(乗務の前後の確認)と、その記録の保存
  • 勤務時間と乗務時間の基準に収まる乗務割をつくること
  • 酒気を帯びた運転者や、疲労・睡眠不足などで安全に運転できない運転者を乗務させないこと
  • 過積載の防止と、荷物の積み方についての運転者への指導
  • 業務記録・事故記録の作成と保存
  • 運転者への指導・監督と、適性診断の受診

1人で事業をしている場合は、これらを自分で行います。

2025年4月に加わった決まりは、ほかにもあります

安全管理者の選任・講習のほかに、2025年4月から新しく義務になったのは次の5つです。

  • 初任運転者、65歳以上の運転者、一定の事故を起こした運転者への特別な指導と、適性診断の受診
  • 業務記録の作成(1年間保存)
  • 事故記録の作成(3年間保存)
  • 死傷者が出た事故など、一定以上の事故の国土交通大臣への報告
  • 運転者の氏名や、指導・適性診断の受診状況を記した運転者等台帳の備え付け

点呼、勤務時間の遵守、運転者への指導・監督などは、リーフレットで「引き続き実施が必要な主な安全対策」とされています。それぞれの中身は、別の記事で順に取り上げます。

運行管理者や安全運転管理者とは、別の制度です

「運行管理者」は、緑ナンバーの一般貨物自動車運送事業などで置く資格者です。緑ナンバーの事業も経営していて運行管理者を選任している場合は、その人を安全管理者にでき、講習も要りません。運行管理者の資格者証を持っているだけでは、安全管理者には選任できません。

道路交通法にもとづく「安全運転管理者」は警察の制度で、安全管理者とは別です。兼ねることは認められていますが、貨物軽自動車安全管理者としての選任と届出は別に必要です。

出典:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」「よくある質問とその回答(FAQ)」「登録貨物軽自動車安全管理者講習機関の一覧」、自動車事故対策機構「eナスバ(安全管理者講習)」、貨物自動車運送事業法(いずれも2026年10月6日確認)。制度は改正されることがあるため、個別の事情は管轄の運輸支局に確認してください。

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